ここでは、安全性分析の代表的な指標をいくつか紹介する。
流動比率
流動比率とは、1年以内に資金化できる流動資産と1年以内に返済しなければならない流動負債との比率から支払能力をみる指標である。
流動比率の一般的な目安は以下の通りである。
- 200%:理想
- 150%:標準
- 100%以下:要注意
200%の場合は1年以内に資金化できる流動資産が1年以内に返済しなければならない流動負債の2倍上回っているため、十分な資金が現状確保されていると見ることができる。
100%以下の場合は1年以内に資金化できる流動資産が1年以内に返済しなければならない流動負債を下回っているため、資金繰りが苦しくなり、どこかで補填しなければならないことが予想される。
原材料・仕掛品・製品などの棚卸資産が多く計上されている場合は注意が必要だ。
なぜならば、棚卸資産は顧客に販売し、さらにその代金を回収し資金化しないと負債の返済に充てることができないからである。
そのため、より資金性に注目した指標が下の当座比率となる。
当座比率
当座比率とは、流動資産内のすぐに資金化できる当座資産と1年以内に返済しなければならない流動負債との比率から支払能力ををみる指標である。一般的に、負債の返済は現金で行われるため、流動比率よりもより資金性に注目した指標として重要となる場合がある。
当座比率の一般的な目安は以下の通りである。
- 120%以上:理想
- 100%:標準
- 80%以下:要注意
100%以上の場合は流動資産内のすぐに資金化できる当座資産が1年以内に返済しなければならない流動負債よりも上回っているため、十分な資金が現状確保されていると見ることができる。
80%以下の場合は流動資産内のすぐに資金化できる当座資産が1年以内に返済しなければならない流動負債を下回っているため、棚卸資産の早期資金化などの対策を取らなければならないことが予想される。
固定比率
固定比率とは、固定資産と自己資本の比率で、固定資産投資の安全性をみる指標である。
固定比率の一般的な目安は以下の通りである。
- 100%以下:理想
- 120%:標準
- 200%以上:要注意
自己資本は返済義務のない調達資金であるので、この中で固定資産投資が行われていれば安全という見方ができる。これを指標を用いて言い換えれば、固定比率100%以下が安全となる。
固定比率100%以上ということは、固定資産投資が他人資本、ほとんどの場合、借入金によって調達していることとなるので、200%を超える場合は資金繰りに注意を要する。
固定長期適合率
固定長期適合率とは、固定資産と自己資本および固定負債の比率で、固定資産投資の安全性をみる指標である。
固定長期適合率の一般的な目安は以下の通りである。
- 50%:理想
- 80%:標準
- 100%以上:要注意
一般的に、設備投資などの固定資産投資は借り入れを伴うことが多い。そのため、固定比率に固定負債の要素を追加したものが固定長期適合率である。
固定長期適合率100%以下ということは、固定資産より返済義務のない調達資金と1年後以降返済しなければならない固定負債の合計の方が大きくなっているので、固定資産投資は安全といえる。
固定長期適合率100%以上ということは、固定資産より返済義務のない調達資金と1年後以降返済しなければならない固定負債の合計の方が小さくなっているので、固定資産投資は自己資本と固定負債以外のところから調達した、つまり流動資産から調達したことになるので、この固定資産投資は資金繰りに注意を要する。
自己資本比率
自己資本比率とは、自己資本と負債および純資産の比率で、企業が調達した資金の安全性をみる指標である。
自己資本比率の一般的な目安は以下の通りである。
- 70%:理想
- 30%:標準
- 10%以下:要注意
一般的に、自己資本比率が高い程負債が少ないこととなるため、返済義務のない調達資金で事業を行っていることとなり資金繰りに余裕がある経営を行っていると見ることができる。
固定資産回転率
固定資産回転率とは、売上高と固定資産の比率で、固定資産の利用効率をみる指標である。
一般的に、固定資産から商品や製品を作成しているので、固定資産がしっかりと売上に繋がっているか、有効利用されているかを捕らえることは重要だ。
固定資産回転率の数値が低い場合は、売上高が少ないか固定資産が多いことを表しているので、固定資産が有効に活用できていないか、不要な固定資産が含まれている可能性が高い。
同業他社との比較で用いることが重要だ。
棚卸資産回転日数
棚卸資産回転日数とは、棚卸資産と売上高の比率で、何日分の在庫を持っているかをみる指標である。
棚卸資産回転日数が多い場合は、棚卸資産が売上高に変わる日数が長いので、在庫管理が適切に行われていないとみることができる。
棚卸資産回転日数が少ない場合は、棚卸資産が売上高に変わる日数が短いので、在庫管理が適切に行われていると見ることができる。
ただし、過剰に少ない場合は、在庫切れなどの機会損失も考えられるので注意を要する。
自社での過去との比較や、同業他社との比較で用いるのが有効だ。
売上債権回転日数
売上債権回転日数とは、未回収の売上債権と売上高の比率で、売上債権の回収に何日かかるかをみる指標である。
売上債権回転日数が多い場合は、現金化までの期間が長いことを意味しているので、資金繰りに注意を要する。
売上債権回転日数が少ない場合は、現金化までの期間が短いことを意味している。
自社での過去との比較や、同業他社との比較で用いるのが有効だ。
買入債務回転日数
買入債務回転日数とは、買入債務と売上高の比率で、買入債務の支払いに何日分の売上が必要かをみる指標である。
買入債務回転日数が多い場合は、支払いまでの期間が長いことを意味している。
買入債務回転日数が短い場合は、支払いまでの期間が短いことを意味している。
一般的に、支払いまでの期間が長いほうが良いとされているが、資金不足のため支払いが遅れている可能性もあるため、現金預金や流動資産の数値も確認しておくのが良い。
自社での過去との比較や、同業他社との比較で用いるのが有効だ。
売上債権対買入債務比率
売上債権対買入債務比率とは、売上債権と買入債務の比率で、営業循環における資金繰りの概況をみる指標である。
売上債権対買入債務比率が100%以上の場合は、売上債権回収と買入債務返済を同時に行うと現金預金が増加することを意味している。
売上債権対買入債務比率が100以下の場合は、売上債権回収と買入債務返済を同時に行うと現金預金が減少することを意味している。
注意しなければならないことは、売上債権の回収期間と買入債務の返済期間が考慮されていないということである。
例えば、売上債権の回収期間が買入債務の返済期間より短い場合は、売上債権対買入債務比率が100%以下になりやすいため、良くない数値と見えるが実際は早期に売上債権を回収しているため問題はないと考えられる。
このように、売上債権対買入債務比率を用いる場合は、売上債権の回収期間と買入債務の返済期間に注意を要する。