それでは早速解説していく。
ABC分析の手順
期間を過去一年間、対象を商品、重要度を売上とした場合を例に取り、ABC分析を行う手順を説明していく。
各商品の過去一年間の売上を計算し、売上を降順に並び替えて、各商品の売上の合計にしめる構成比を計算し、降順に構成比を累積する。そして70%または80%のところと90%のところに線を引く。ここでは、70%のところに線を引き、商品1~3までをAランク、商品4~8までをBランク、商品9~15までをCランクとした。これで完成だ。
言葉で説明するよりも、以下の図を見ていただいたほうが一目瞭然だろう。各商品の過去一年間の売上さえ分かっていれば、エクセルなどの表計算ソフトで簡単に作ることができる。
ABC分析の切り口
上記の例では過去一年間の商品の売上を3分割して作成したが、いろいろな切り口で分析を行うことができる。期間としては、
- 週単位
- 月単位
- 四半期単位
- 半年単位
- 年単位
- 季節単位
などの期間の単位が考えられる。対象としては、
- 商品
- 商品グループ
- 顧客
などの対象が考えられる。重要度としては、
- 売上高
- あら利
- あら利率
などの重要度が考えれる。分割方法としては一般的には3分割だが、こだわる必要はない。
これらは一般的なものであり、実際に使用する場合は、あなたの事業と照らし合わせて選択して欲しい。もしかしたら、過去一年間の曜日や天候などの切り口も有効かもしれない。
パレートの法則とロングテール
ABC分析の見方を説明する前に、パレートの法則とロングテールについて説明する。
パレートの法則とは、80-20の法則ともいわれ、全体を数値と要素のペアの集合と考えたとき、数値の全合計の80%の数値は、20%の要素の合計で表されているという経験則のことである。簡単な例で言うと、「売上の8割は2割の顧客によってもたらされている」などがある。
ロングテールとは、上の図で、AランクとBランクの幅が狭く、Cランクの幅が広い状態のことをいう。Cランクの幅が広いためグラフの形が「長い尻尾」に見えることからロングテールと呼ばれており、重要度が低い対象でほとんど占められていることを表している。ロングテールの代表がAmazonである。
ABC分析による現状の把握と対策
では、ABC分析を行った結果、何が分かるのかをご説明する。
例えば、商品と売上でABC分析を行った場合は、Aランクのグループは「売れ筋商品」、Cランクのグループは「死に筋商品」と見ることができる。つまり、Cランクの商品がよりもAランクの商品のほうが、売上に対する重要度が高いため、Aランクの商品の在庫管理をより厳重に行わないといけない。Aランクの商品を切らしてしまった場合、機会損失がより大きくなるためだ。
一般的に、店舗を構える小売業では商品陳列の売り場面積や在庫を保管するバックヤードが狭いため、回転率の良い商品のみ陳列し、回転率の悪い商品は棚から外すなどの検討材料として使用することができる。
顧客と売上でABC分析を行った場合は、Aランクのグループは「優良顧客」、Cランクのグループは「重要度の低い顧客」と見ることができる。つまり、Cランクの顧客が離れるよりもAランクの顧客が離れた場合、経営に対する影響が強いので、Aランクの顧客が絶対に離れないようにしなければならない。
各ランクのグループ内で何か共通する特徴がないかを探ることも重要だ。例えば、Aランクにある共通する特徴があった場合、BランクまたはCランクの中でその特徴を持つものを探す。もしあった場合、それをAランクへ移行できる可能性が高いかもしれない。
このように、現状が把握できるとともに、対策の優先順位が付けやすいのがABC分析のメリットである。そして、例えば顧客を対象とした場合に
- Aランクの顧客を1年で1社増やす
- Cランクの顧客の訪問回数を減らして、その分Bランクの顧客の訪問回数を増やす
などのような経営戦略の具体的な指針を設けることができる。このようにして、設けられた経営戦略は再度ABC分析を行うことにより、その結果や効果を検証しやすいため、是非、ABC分析で具体的な指針を設けて欲しい。
ABC分析の注意点
ABC分析とは、ある期間で対象を重要度によって分類する分析手法だった。これを少し深く読むと、対象間の関連性は考慮されていないということだ。
例えば、店舗を構える小売業で商品と売上でABC分析を行い、Cランクの商品cを「死に筋商品」として認識したとしよう。もし、この商品cはAランクの商品aと強く結びついた場合、商品cがなくなると商品aの売上が鈍るかもしれない。これは商品の関連性が考慮されてないために起こることである。よって、ABC分析を行い、何か対策を講じる場合は対象間の関連性も考察した上で決定したほうが良い。
もう一つの注意点として、対象の中に一過性のものがないかを探ることも重要だ。一過性の対象が含まれているにも関わらず、他と同様に分析すると結果を見誤る可能性がある。もしくは、一過性の対象を一過性に止めない方策を考えることも重要かもしない。
まとめ
ここまで、ABC分析の手順、切り口、現状の把握と対策、注意点についてみてきた。
ABC分析は一度行ったらよいというものではない。当たり前だが、商品にはライフサイクルがあるし、顧客も今後常に同じとは限らない。また、経営戦略の具体的な指針を設けた場合は、検証をしっかり行わないと意味がない。だから、定期的にABC分析を行って欲しい。エクセルなどの表計算ソフトで簡単に実践できるので、是非有効活用して欲しい。
ピンバック:自店の強みと弱みを知り、強化していくためのABC分析 | 繁盛店研究ブログ『繁盛もん』